Moonrise Bali

バリ島の「ニュピ」という祭日をご存知ですか?

ウィキペディアで「ニュピ」を調べるとこんなことが書いてあります。

ニュピ(Nyepi)は、バリ・ヒンドゥーの元日(サカ暦の元日)である。西暦の3月ごろにあたる。この日、バリ島では一日中、空港や港、宿を含め、ほとんどの施設が閉鎖され、観光客も外出できない [1]。
バリ・ヒンドゥーが信仰されている場所では、前日にオゴオゴ(en:Ogoh-ogoh)という大きな鬼の張りぼてが練り歩く。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%94

重要な情報が抜けていますね。

ニュピの当日は外出できないだけではありません。火や電気を使うことも禁じられるので、夜にはバリ島中の電灯が消えて真っ暗になるんです。

多くの人は「不便ねえ」と思われるかもしれません。
でも、一部の人にとってはヨダレの垂れるようなうらやましい状況ですよね。

そう、天文観察や星空撮影が好きな人にとっては最高の環境なんです。

街の電灯など、人工の光によって星がよく見えない、キレイに撮影できないことを「光害」といいます。
だから、本格的に星空撮影をする人はわざわざ郊外に出かけたり、世界的な天文台も人里離れた山の中に建てられていますよね。

でも、都会の明かりが一斉に消えて星の光だけが夜を照らす日があったら?

2018年9月、北海道では地震の影響で大規模な停電がありましたね。
災害があったことは不幸でしたが、「人工の電気が消えるとこんなに星が見えるんだ!」とSNSで話題になりました。

ニュピの夜にバリ島で起こるのはこういうことです。
一年に一度、暦で決められた日にバリ島全体の明かりが消えます。

バリ島はふだんから星空撮影に適したところですが、ニュピの夜に見える景色はけた違いです。
気軽に滞在できるバリ島のリゾートエリアから、まるで標高の高い山奥にいるかのような満天の星空がみられます。
一年中あたたかいバリ島ですから、夜通し外に出ても体調を崩すリスクが低いですね。

さらに嬉しいポイントがもうひとつ。
サカ暦のカレンダー上、ニュピは必ず新月の日にあたります。
ニュピの夜は月の光さえなく、星の光だけが夜空の主役です。

こんなに条件のいい日に星空撮影をしない理由はありません。
天文観察や星空撮影が趣味の人にはぜひ、一生に一度はバリ島のニュピを体験してほしいものです。

この記事では、バリ島在住の熊澤カメラマンによるニュピの夜の活動記録をご紹介します。
バリ島での星空撮影に興味がある人はぜひご一読ください。

バリ島でニュピを過ごすということ


ニュピの日は元来、バリ・ヒンドゥー教徒が家のなかに閉じこもってすべての活動をやめ、静かに瞑想する日です。
バリ・ヒンドゥー教徒以外のインドネシア人や観光のためバリを訪れている外国人も、表を出歩くことは出来ません。
観光客は、ニュピ当日を挟んで2泊分をホテルの中に缶詰めで過ごすことになります。

たとえば、2018年のニュピは3月17日でした。
3月16日の夜中から、3月18日の朝まではホテルの中で過ごすことになります。

ニュピ前日がサカ暦の大晦日にあたり、各地で「オゴオゴ」と呼ばれるお化けの山車のパレードが行われます。
「オゴオゴ」の行進は16日の深夜まで続き、その後人々は家に帰ってニュピを迎えます。

ニュピ当日の夜明け以降、一般人はもう外出することはできません。
警察官や自警団など、特別な許可を持った人は街の見回りをしています。
もしニュピの日に家にこもらず表でふらふらしていたら、見回りの人に逮捕されてしまいます。
いつもニコニコしているバリ人ですが、ニュピに関するルールはかなり厳しめです。
バリ島に住むわたしの友達は、自宅で子供をトイレに行かせようと懐中電灯をつけただけで「ちょっと奥さん!明かりが漏れてるよ!」と自警団の人に怒られた、と言っていました。

リゾートホテルに滞在する場合、日中はプールサイドやホテルレストラン、公共スペース等、ホテル敷地内で自由に過ごすことができます。
日没を迎えるとホテルスタッフが各客室に「電気を付けないでください」あるいは「光が漏れないようカーテンを閉めてください」と言ってまわります。
ホテルレストランも暗くなると営業を終えるので、夜食の用意をしっかりしていってくださいね。

こうして暗くなったバリ島に、満天の星空が現れます。

ニュピの翌日の朝、日が昇ったら外出禁止時間はおしまいです。

星空撮影に適したおすすめホテル

ニュピの夜にはバリ島のどこでも素晴らしい星空を楽しめると言いました。
でももしあなたの目的が星の鑑賞だけでなく、星空写真を撮りたいと思っているなら、より条件のいいホテルを選ぶ必要があります。

筆者は2011年のニュピに、レギャン通りに歩いてアクセスできる、繁華街ど真ん中のホテルに泊まりました。
繁華街のホテルに泊まるメリットは、オゴオゴのパレード見物がしやすいことです。
しかし繁華街のホテルは一般に敷地が狭く、まわりに建物が密集していて空が見えづらいというデメリットがあります。
写真を優先したい人にとって、建物が空をふさいでいて思うような構図を取れなかったり、立地上、天の川と逆方向の空にしかレンズを向けられないようなホテルはがっかりですね。

どうせなら見晴らしの良いホテルを選びましょう。

熊澤カメラマンは2018年のニュピに、【ザ キラーナ ウンガサン The Kirana Ungasan】
で星空撮影を行いました。
ウンガサンというところは土地全体が高台にあり、眺めがいいことが特徴のエリアです。
その中でもこのホテルは絶妙に視界が開けていて、空を狙うのにぴったりの立地条件。おすすめです。

客室がツリーハウスのような面白いホテルです。
内部は2名で泊まれるダブルベッドの寝室とトイレ・シャワー室。
水回りは清潔だし、エアコンの利きも問題ありません。

2018年のニュピ、6棟のツリーハウスは満室でしたが、宿泊客の半数は一眼レフカメラと三脚を持ち込んでいたし、レストランのテーブルにラップトップを広げて画像編集をしている姿も見かけましたね。
星空狙いのカメラマンにとって、すでに隠れた人気宿になっているようです。

ホテル空き状況の確認はこちら>>【ザ キラーナ ウンガサン The Kirana Ungasan】

2018年ニュピの星空撮影

それでは、このホテル内で撮れた実際の写真や動画をご覧ください。

上の動画では、ニュピ前夜(2018年3月16日)とニュピ当日(2018年3月17日)の風景を比較しています。

街に明かりがたくさん点いている前日に比べ、ニュピ当日の夜ははるかにたくさんの星が見えることがわかります。

 2018年ニュピ、星空撮り放題タイムスタート!(カメラマンブログより抜粋)

まだ部屋もレストランも結構な明かりが漏れる中、テスト撮影です。

すでに宇宙に立ってる感じで、想像以上でびっくりしてます(笑)

このプールももっと暗くなるはずなので、反射が狙える予定です。
朝までがんばります!

 [ 2018年バリ島ニュピ ]星景写真(カメラマンブログより抜粋)

バリ島は今午前3時。
作品ぽく撮ってみました。

天の川の位置的に乾季もニュピやってほしいな・・・

 さそり座のしっぽあたり。(カメラマンブログより抜粋)

90mmで撮ったさそり座のしっぽ周辺。
肉眼でも余裕で見えるM6,M7星団。
今回6秒で撮りましたが90mmだと流れちゃう。4秒くらいだな~(自分用メモ)

早くまた来年のニュピにならないかな。(笑)

ニュピの星空タイムラプスムービーです。
結露との戦いで短い時間しか撮れなかったのですが、いろいろ撮った中から二つの動画をつなげてみました。
約10秒で音有ります。

来年はレンズ用ヒーター買わないとなー。

「外出自由エリア」の噂は本当か?

さて、時をさかのぼって2015年。
熊澤カメラマンはこの年のニュピに、バリ島メデウィのホテルに宿をとりました。

メデウィはバリ島西部のエリアで、サーフスポットとして有名です。
なぜわざわざそんなところまで出かけたかというと、こんな噂を聞きつけたからでした。
「メデウィはバリ・ヒンドゥー教徒が少ないので、ニュピの外出禁止令がゆるい。観光客はニュピの日でも平気で海に出かけてサーフィンしているらしい」

噂が本当なら、ニュピ当日でも自由にホテルを出て撮影スポットを探せるかもしれない。
そんな期待を淡く抱いて、【メデェウィ ベイ リトリート Medewi Bay Retreat】
にチェックインしたのでした。

しかし結論から言うと、メデウィでもニュピ当日にホテルから外出することはできませんでした。
他のエリアのホテルと同じように、ここでもニュピ当日は外出できないことをホテルスタッフから説明されました。

なのでニュピ当日にホテル外で撮影することはあきらめ、前日の夜のうちに最寄りのビーチへ出かけることにしたんです。
みなさんもニュピを過ごす際は、現地のルールに従って楽しんでくださいね。

2015年メデウィでの星空撮影

 ニュピ直前!星空ウェディングフォトのサンプル撮影(カメラマンブログより抜粋)

場所はバリ島西部のメディウイのビーチ。
仕事を終えた後、オゴオゴによる交通規制を避けながら、バイクで移動です。
到着したのは、もうすぐニュピ!の午前0時位。
せっかくの遠出なので、星が綺麗なのを期待してドレスを持込み、星空ウェディングフォトのサンプル写真を。
期待以上の星空でした。

と言うことでモデルは自分です(笑)。

また行きたいな~でも遠すぎだな~メディウイ宿泊のお客様いないかなぁ~(独り言。)

 2015年ニュピの星空(カメラマンブログより抜粋)

去年は自宅で映画や日本の番組のDVDを13枚見ても、まだ暇だったバリ島静寂の日”ニュピ”。
今年はかなり遠出して、ホテルで星空を見ながら過ごしました。
バリ島中消灯という事で、プラネタリウムでしか見たことの無いような、無数の星星。
かなり大きな流れ星も見ることが出来ました。

写真はホテル内、キャンドルライト一本で撮ったニュピの日の星空。
写真で見ると明るいですが、実際は真っ暗闇です。
正面にオリオン座が写っているのですが、星が多すぎて何がなんだかわかりません。

こちらは真上の星空。

おわりに

バリ島ニュピの星空撮影に興味を持っていただけましたか?

次のニュピは2019年の3月7日です。
電灯にも月の光にも邪魔されないニュピの夜は、まるで星空ファンのために用意されたかのような奇跡の時間です。
ニュピの日ならではのバリ島の魅力をぜひ味わいに来てください。

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